雑記

【ネタバレ注意】アレックス・ガーランド監督の『WARFARE』(ウォーフェア 戦地最前線)を見てきた感想

3.5
雑記

全編を通して、とにかく人のエゴの強烈さを感じる、どっと疲れる映画(誉め言葉)でした。

◎あらすじ(ネタバレあり)

もう強烈にネタバレあるので見たくない人はすぐにブラウザバックして、他の記事でも読んでくだしあ。

それではあらすじ。こんな話でした↓

  1. アメリカの特殊部隊、ネイビーシールズの小隊が今日もイラクで作戦展開中。
    2つの分隊に分かれて、監視所を設置して目標を監視することに。
  2. 第一分隊の場所がバレた!手りゅう弾が監視所にぶち込まれ、激しい銃撃戦に。
    第一分隊に怪我人が出たため、後方へ輸送すべく兵員輸送車を呼ぶ。
  3. 兵員輸送車が到着したところをIED(即席爆発装置)で攻撃され、さらに負傷者続出!
    兵員輸送車もダメージを受けて帰って行っちゃった。
  4. 第二分隊が合流。第一分隊長は茫然自失状態で、指揮権を第二分隊長に継承。
    戦闘機に威嚇飛行をお願いしたりしてどうにか攻撃を耐え忍ぶ。
    兵員輸送車はもう出せないとか言われたけど、指揮官のふりして呼んだら大丈夫やったわ。帰ったらどうなるんやろなあ…。
  5. 追加で呼んだ兵員輸送車がようやく到着。
    負傷者とともにみんなで分乗して帰るやで…。

イラクの小さな町に、アメリカがドカドカやってきていざこざを起こし、住人の生活を踏みにじって帰っていく。
そんなストーリーです。

◎あなたも一緒に苦しもう!

いわば体験型映画です。

事実を淡々と描写しているので、そこまでドラマ性はありません。
かといって客観的事実が描写されるというわけではなく、ネイビーシールズ側兵士ないし本部から見た、意図的に限られた視点の情報しか提供されません。

それは冒頭に表示される、「この物語は人物の記憶にのみ基づいています」(意訳)という文言にも凝縮されています。

そこが本作のミソであり、恐怖と緊張を生む秘伝のタレになっています。

敵の姿などほぼ映りません。
裏を返せば、いつどこから何で撃たれるかわかったものじゃないのです。
これが視聴者である我々にも緊張感を生みます。

実際、IEDの爆発シーンは唐突で、客席で飛び上がってしまいました。
まさに体験型映画ですね。

◎戦争とは、最大限強化したエゴの発揮である

イラクの現地住民の家を接収して、監視所に使います。住んでいた家族は軟禁します。

随伴していたイラク軍通訳は弾除けとして最初に突っ込ませます。その結果、犠牲者が出ても誰も気にしません。

内臓の飛び出したイラク軍通訳の死体なんて道に放置でよか。もう一人は逃亡したっぽいけど気にしてる暇ないわ。

いかにイラクの人のことを考えていないかが、端的に、痛烈に、描写されています。

いや、戦争という行為で現地人のことを考えるほうが非合理です。
むしろこういう扱いこそが合理的なのです。

とにかくエゴ。優先するのは自分、ないし、よくて部隊の仲間まで。
エゴが強くないと戦闘行為なんて続けられないのかもしれません。

面白いもので、エゴは私にまで伝染しました。

通信兵のレイが兵員輸送車に負傷者を運んで、降り損ねて基地に帰っていくシーンがあるんですが、
「もしかしてこいつわざと降りなかったんじゃないか?」という疑念を抱いてしまいました。

指揮を放棄する分隊長、通信を放棄する通信手、警戒を放棄する小銃手…。
この異常な場所では、自己保存の本能のためにエゴが最大限強化されます。

劇中ずっとレイは味方思いですから、たぶんそんな意図はありません。
でも私はそう疑ってしまったんですよね。

これって私にも、エゴが、自己保存本能が、伝染したということじゃあないですか?

◎なんだったんだよこの戦闘、という後味の悪さ

物語もラストに近づくと、
回収の兵員輸送車が家々を破壊しながら到着してくれました。

軟禁されていた家族は、家は壊されるわカーペットはパクられるわ、「Why!?」「Why!?」とネイビーシールズに詰め寄りますが、彼らは特段説明をしません。
兵員輸送車になんとか分乗して帰っていきます。

さっきまでの喧騒が一転、静寂の中にぽつんと置いて行かれる家族。

そして外の通りでは、隠れていたアルカイダ兵たちがぞろぞろと道に出てきます。

そうなんですよね、この地域にお邪魔して戦闘を仕掛けたのは、むしろネイビーシールズ側なんですよね。

イラク人家族を軟禁してまで作ったこの監視所に何の意味があったのか?
作戦目標はわずかでも達成されたのか?

俯瞰的な情報は示されないので、どういうつもりだったのかすら不明です。

ここまで見れば、あなたもこう思うはずです。
「なんだったんだよこの戦闘」

あれ?これって…
大量破壊兵器があると思って侵攻して、何も見つからずうやむやになったイラク戦争そのものなんじゃ…。

そういう映画でした。

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